Anoko

Anoko

あの子

" それからしばらく保健室とピアノの部屋とをそっと往復する日々が続いた。せっかくだから席について授業を受けてみたい、とは思うけれど途中から行くのもなんだか気恥ずかしくて、一ヶ月を見つけた特等席で過ごすことに決めた。彼らは毎日校庭を走り回って、私のできないことを全部やってのけた。そして、今日も。グランドピアノの蓋を開けて和音の位置に指を下ろす。弾くのは今日ももドビュッシーの沈める寺。前はいつも引っかかっていたはずのところもいつも間にか流れるように弾けるようになっている。『柔らかく響く霧の中で』『少(0

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