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混沌が気持ちいい。監督の「愛」を感じる映画

2018.08.16

シバノソウです。『聖なるもの』という、『花に嵐』と同監督の映画を見た際、引っかかるものがあり、「前撮った作品も見ることができればなにかわかるかな」と思い、お願いして見させていただいた作品です。結局、今回も完全につかむことはできなかったのですが、その考えさせてくれる余白が岩切映画の醍醐味であり、混沌がカオスではなく気持ちの良いものだったので、「またやられたな」と思いました。あと、音楽の使い方がうまくてずるいなと思いました。

あらすじ

大学で誘われるがまま、映画研究会に入った新入生の岩切一空(岩切一空)。 部室にあるカメラを借りるが、その返却期限は14日間。 特に撮りたいものもない岩切は、日記のように映像を撮り始めるが、行く先々で現れる一人の女の子、花(里々花)が気になって仕方ない。 花に「未完に終わった映画の続きを撮って欲しい」と頼まれた岩切は花のために動き始めるが、周りでは異変が起き始める。

わからない、だから考える。

岩切一空監督の作品です。 『聖なるもの』という、一番新しい映画についての感想は私のブログに書いてあるのでよければ見て欲しいのですが、とにかく全くわかりませんでした。 それでも好きなのは、『クリームソーダシティ』(作・長尾謙一郎)という私の大好きな漫画の影響があるかなと思っていて。 『クリームソーダシティ』は、もっとわからないんですね。 何がわからないかというと難しいのですが、物語として成り立っていて、読み進めていくと解決がされるような漫画ではなくて。 だけど要所要所で、「ここが好き」「ここの感覚が面白い」と思うことができて。 分かりやすいものを作ることってたぶんできるはずで、それを、難しくすること(混沌とすること)って、すごく受取手側を信用しているというか、賭けな気がしていて。 そういうところが、長尾さんも、岩切さんも、かっこいいなと思います。

「やり方がわかるからやるんじゃないんでしょ、やりたいからやるんでしょ!」

岩切監督の作品は、一貫して「映画を撮るということ」について考え、悩み、その様子を映画にしている感じがしていて。 映画という表現を使って、岩切さんがなにを言おうとしているのかはまだ私には掴めなくて、だけど、未完に終わった映画を、花の希望通りに撮り終えたという最後のシーンでは、終われなかった映画と花、どちらも成仏したかのようなとても美しい世界が広がっていて、岩切さんにとっての救いが映画であり、また苦しみも映画なのかなと、岩切さんと映画を撮るということはやっぱり同意義なんだなという、深い愛を感じました。 花がよく言っていた「やり方がわかるからやるんじゃないんでしょ、やりたいからやるんでしょ!」というのは、映画だけではなく私がやっている音楽や、その他すべてに共通すると思うし、それを里々香さんに言わせている岩切監督の、覚悟のようなものなのかなと思ったりしたのでした。

シバノソウ

シンガーソングライター。アイドル、DJ、バンド、その他の界隈を縦横無尽に駆け抜けながら、ROJACK2017で入賞、その他大型サーキットフェスにも出演し実力も底知れない。3月には無所属にして渋谷WWWワンマンを大成功させた。これからの活動が注目されている19歳。 Twitter:@soshibano

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